2011年8月5日金曜日

うつ病における自伝的記憶再生の欠如の機能解剖学的構造

Functional anatomy of autobiographical memory recall deficits in depression. 2011 Psychological Medicine

うつ病には特定的な自伝的記憶の再生の欠如があると言われている。広範囲の研究によって健常人における自伝的記憶の機能解剖学的相関が検討されているが、うつ病における自伝的記憶の神経生理学的基盤は検討されていない。本研究の目的は、自伝的記憶の再生中の血行動態の相違を健常者とうつ病で比較することである。12人のうつ病患者と14人の健常者はポジティブ語、ネガティブ語、中性語などの手がかりに反応した自伝的記憶の再生中にfMRIを行った。記憶の再生と引き算問題を対象したときの血行動態をうつ病患者と健常者で比較した。さらに、パラメトリック線形分析によって喚起の程度と関連している領域を検討した。行動データはうつ病において特定性、ポジティブ記憶の減少がみられ、喚起と親近性は増加した。海馬周辺のBOLD反応は健常者において高かった。島の前部の活動は特定的な自伝的記憶の再生時に低く、うつ病患者においてはさらに減少していた。ACCの活動は健常者においては喚起の程度と正の相関があり、うつ病患者では相関が無かった。我々は、うつ病患者と健常者の比較において特定的な自伝的記憶が減少しており、分類的な自伝的が増加することを確認した。また、自伝的記憶の検索にかかわる内側側頭葉、前頭葉の活動はうつ病患者と健常者で異なることが明らかになった。これらの神経生理学的欠如はうつ病における自伝的記憶の欠如の基盤になっていると思われる。

うつ病の認知は記憶や情動、自己評価や将来の見通しなどと多岐にわたって神経基盤が調べられているが、それぞれの認知がどのようにうつ病に影響しているのかを総合して理解できるようになったら良いと思う。

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